ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ
清川泰次が見た1950年代のアメリカ
 清川泰次は、資生堂画廊での個展や読売アンデパンダン展などへの出品を経て、1954(昭和26)年6月から約3年の間、アメリカ合衆国はシカゴに単身で渡りました。彼はそれまで描いていた具象画に様々な疑問を抱いており、当時次々と海を渡って日本に流れ込んでくる最先端のアメリカ美術に触れ、またそれを習得すべく、数週間もかけて客船で海を渡り、大陸横断バスでシカゴを日指します。
 シカゴに到着して間もなく、後援者が不幸にも急逝するなど、決してその創作活動は平坦な道のりではありませんでしたが、3年間の修練は清川の作風の抽象画への傾倒を決定的なものにしました。そこでの様々な人々との出会いを糧に、清川は自身の芸術に対する哲学を育んでいきます。それは意外なことに、当時のアメリカで一世を風靡していた抽象表現主義などではなく、日本的な「無」や「空」といった思想への傾倒でした。異国の地アメリカに渡った体験によって、清川はより日本固有の美意識や哲学へと心酔していったのです。そして1963年に、清川は再び研鎮を積むためサン・フランシスコに渡ります。この渡米を転機に、清川が描く抽象画はよりつづまやかな、簡にして要を得た白を基調とする作風へと展開していきます。こうして清川は、独自の作風を1970年代の「白の世界」のシリーズで会得するに至りました。
 この傍らで彼は、学生時代からの長きに及んで趣味としていたカメラで、多くの現地での写真を残しています。これらは、彼がどのようにアメリカを“見て"いたかという貴重な資料写真であるだけでなく、戦後に比類なく隆盛を極めたアメリカを、日本人がどのように注視し、捉えたかという“肖像画"でもあると言えましょう。そこには、鈴生りの見物人で溢れかえる街角、休日を満喫する人々、静まり返る郊外といった、アメリカの光と陰がフィルムに見事に焼き付けられています。そして同時に、そのゆとりの感じられる落ち着いた構図や繊細な色遣いからは、彼の描く絵画との関係性も窺えるでしょう。
 今回の展覧会では、1950年〜60年代というその過渡期にかけて制作された絵画作品は勿論、当時の写真、手記などを織り交ぜ、清川泰次が如何にしてアメリカを見つめ、その影響を受け止めていったかを究明する展覧会です。そこに、我々が想像する以上の清新な“アメリカ"の肖像があり、そしてそこで苦闘を重ねた一人の日本人画家の肖像を重ね見て頂ければ幸いです。

 会 期  7月29日(土)〜11月26日(日)
 休館日  休館日:毎週月曜日(ただし休日と重なった場合は翌日)
 開館時間  午前10時〜午後6時(入館は5時30分まで)
 観覧料  一般200円(160円)、大高生150円(120円)、中小生100円(80円)
     65歳以上及び障害者の方100円(80円)
  ※( )内は20名以上の団体料金。
    小・中学生は土・日・祝日および夏休みの間は無料。
 会 場  清川泰次記念ギャラリー(世田谷区成城2-22-17)
 小田急線成城学園前駅南口徒歩3分
 問合せ  TEL.03-3416-1202

















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